土曜日, 2月 28, 2009

インフルエンザウィルスの生存・伝播は相対湿度ではなく絶対湿度が重要

超有名総合学術雑誌のPNASの2月9日の論文

Absolute humidity modulates influenza survival, transmission, and seasonality
(6ヶ月すると全文読めるそうです)
によるとインフルエンザウィルスの生存時間や伝播は相対湿度よりも絶対湿度が重要なようです。相対湿度は飽和蒸気圧に占める相対的なものなので、温度が低いと相対湿度が高くても絶対湿度は低いままなので、加湿器を使って加湿する場合に室温が低いまま相対湿度だけをあげても効果は低くなると考えられます。

インフルエンザが冬にはやるのは気温が低くなり絶対湿度も下がるからなのですね・・・(寒くて人々がより密閉空間で時間を過ごすとかもあるでしょうが、、、)

あくまでも実験室でのデータなので、実際に絶対湿度を上げることによりインフルエンザの感染が予防でき(リジオネラなど他の感染が増えるなどがないかどうか)るのかどうかはランダム割付の臨床試験をして見なければならないと思います。

が、常識的な相対湿度(40-50%)までで気温・室温をあげて絶対湿度を上昇させることに大きな副反応は考えにくいので何年後かのインフルエンザ予防ガイドラインに絶対湿度のことも々分かるかもしれません・・・

感染経路の気道局所の絶対湿度を上げるためには鼻呼吸やマスクは有用そうです。口呼吸と鼻呼吸では湿度も温度も変わってくると思います(鼻は息を吸う時に加温・加湿するだけでなく、無駄に温かい空気を出さない役割もあるようです)。マスクを使うとめがねが曇ることが多く唯一LASIKしたいなぁと思うときです。

水曜日, 2月 11, 2009

希少疾患患者のためにHealth2.0サイト Rareshare

Rareshare.org - Connecting Those Affected by Rare Disorders
http://www.rareshare.org/

Rareな疾患に悩んでいる人をつなぐSNS Rareshare.org

日曜日, 2月 08, 2009

抗うつ薬比較 未来を感じさせる感動論文

これはすごい論文です。

2万5千人の117の臨床試験から12種類の抗うつ薬の効果と中断を比較するという論文です。

Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis : The Lancet.

原文を見ると 対角線だらけの12角形でどれとどれがガチンコ対決しているのかよくわかります。統計的な仮定のもとにAとBとの対決でこう、BとCの対決でこうならAとCの対決ではこれぐらいだろうというのをWinBUGSというソフトでマルコフ連鎖モンテカルロというPCの力まかせのサイコロを何回も振るのに近い方法で分析しています。

12の薬剤の効果のランキングの確率分布、許容度(副作用などで飲まなくなる)のランキングの確率分布が一覧で出ており、どの薬が効果が高そうで、中断が少ないかつまびらかになっています。

抗うつ剤、効果に3割の差 日英伊研究、薬を順位付け
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200901290133.html

日本で使えるものではジェイゾロフト トレドミン パキシル デプロメール、ルボックス の順になるそうですが、4つの効果や中断の確率分布なども出せるでしょう。

私がこの論文に未来を感じるのは 同じデータセットとそれなりのパワーのPCがあればたとえば30歳アジア人女性では?などと臨床試験でとっているであろう属性を入れればその属性での効果や中断の確率分布も出せるはずということです。突き進めれば遺伝子多型も含めテーラーメード医療になるのでしょうが、今あるデータでもデータセットとMCMCで患者の属性に一番適した薬物選択が可能ということです。

また薬の価格やQOLなども組み込むとcost-effectivenessでも同じような分析はできるので、数字に落とし込めることからは最善の選択をするということも可能です。

同じように頻度が高い病態で競合薬が沢山ある 脂質関連でも同じような研究が出版されるでしょうね・・・データセットが使える形にさえなっていれば