日曜日, 2月 08, 2009

抗うつ薬比較 未来を感じさせる感動論文

これはすごい論文です。

2万5千人の117の臨床試験から12種類の抗うつ薬の効果と中断を比較するという論文です。

Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis : The Lancet.

原文を見ると 対角線だらけの12角形でどれとどれがガチンコ対決しているのかよくわかります。統計的な仮定のもとにAとBとの対決でこう、BとCの対決でこうならAとCの対決ではこれぐらいだろうというのをWinBUGSというソフトでマルコフ連鎖モンテカルロというPCの力まかせのサイコロを何回も振るのに近い方法で分析しています。

12の薬剤の効果のランキングの確率分布、許容度(副作用などで飲まなくなる)のランキングの確率分布が一覧で出ており、どの薬が効果が高そうで、中断が少ないかつまびらかになっています。

抗うつ剤、効果に3割の差 日英伊研究、薬を順位付け
http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200901290133.html

日本で使えるものではジェイゾロフト トレドミン パキシル デプロメール、ルボックス の順になるそうですが、4つの効果や中断の確率分布なども出せるでしょう。

私がこの論文に未来を感じるのは 同じデータセットとそれなりのパワーのPCがあればたとえば30歳アジア人女性では?などと臨床試験でとっているであろう属性を入れればその属性での効果や中断の確率分布も出せるはずということです。突き進めれば遺伝子多型も含めテーラーメード医療になるのでしょうが、今あるデータでもデータセットとMCMCで患者の属性に一番適した薬物選択が可能ということです。

また薬の価格やQOLなども組み込むとcost-effectivenessでも同じような分析はできるので、数字に落とし込めることからは最善の選択をするということも可能です。

同じように頻度が高い病態で競合薬が沢山ある 脂質関連でも同じような研究が出版されるでしょうね・・・データセットが使える形にさえなっていれば